自転車を100回くらい漕ぐにつき1回くらいの割合で、後輪あたりが突然「がきょ」と言うようになった。気にせずしばらく乗っていたのだけど、やがてその声が上がる頻度が増えていって、最後には10漕ぎくらいに一度「がきょ!」と何かを訴えるような悲鳴みたいなのが出るようになってしまった。自分でチェーンがくるくる回っている場所を調べたがどこが悪いかわからない。手がオイルで真っ黒になるだけだった。自転車がかわいそうなので修理しようと思ったがなんとなく面倒になってしばらく自転車に乗らない生活をしていた。

一ヶ月くらい経ったあるひ。散歩してたら近所に自転車屋さんがあるのをみつけて、そこへ持っていって見てもらった。

くるくるーとタイヤを二回転くらいさせてから、「原因は」と自転車屋さんは言った。「チェーンが錆びついていて凸凹がうまく離れないからですね。チェーンを交換すればすぐに直りますよ 工賃込みでXXXX円くらいかかっちゃいますけれど」とはきはき教えてくれた。僕は知らない人と会話するとなぜか頭が働かなくなるときがあって、「あ、あ、あ、じゃ お願いします」と答えた。

その日のうちに部品を交換してもらってタイヤの空気も入れてもらって、その出来に満足した。自転車は静かになって言うことを聞いてくれるようになった。料金も新車を買うよりも遥かに安いし、部品を交換したらきっとさらに長く使えるに違いない。だけれど、後から色々と事前にしたかった質問が頭に浮かんでくる。「交換しないでサビを綺麗にすることは不可能なのか」「自転車のチェーンというのは互換性があるものなのか。なにかちょっと部品が合わないとかそういうリスクは全くないものなのか」とかとか。お店の人に文句があるわけではまったくないし、今回の判断が間違っていたとも思えない。でもこの先同じようなことがあって、もしもその場で知りたい情報をしっかり得たり検討しないまま、後悔するような判断をしてしまったとしたら怖い。