捨てたもの

物を捨てることに罪悪感がある。だけど生きているとどんどん物を捨てることになる。捨てた物はたぶん知らないどこかの街で燃やされ、灰か何かになる。もしくはぺっしゃんこにされて寂しい場所に埋められる。その先にはたぶん何もないような気がする。詳しくは知らない。

電子ピアノ。すごく気に入っていた机。友達の友達からもらったディスプレイ。着なくなった服。買ったときは10年使おうと思ったけど3年しか使わなかったパソコン。バドミントンのラケット。バスケットボール。サッカーボール。捨てたもの。

思い返すと、もっと大事にできたんじゃないかという気もする。しかしそれは欺瞞である。もう一回、夢の島から捨てたものたちが戻って来て家のピンポンを押して訪ねてきたら。やあよく来たね。とお茶の一杯でもお出しして昔話に花を咲かせるかもしれないが、またずっとお家にいてくれよとはたぶん言えない。